なぜか印象に残る場所|トイレという小さな空間の施工例

トイレは、店や家の中でいちばん小さな空間です。
それでも、店や家を出たあとに「なんだか落ち着いた場所だったな」と感じたとき、その理由を思い返すと、トイレの記憶に行き着くことがあります。

それはトイレは、家の中で唯一、完全に一人になる場所だからかもしれません。
滞在時間は短く、何かをするための空間でもない。けれど、外の音や視線から切り離され、意識が静かに切り替わる。その感覚を支えているのは、広さや設備の豪華さというよりも、光の当たり方や素材の質感、そして視線が自然に落ち着く余白。
トイレという小さな空間には、設計の意図が意外と多く見える場所なんです。


居心地の良いトイレに共通する、2つの要素


トイレが印象に残るかどうかは、特別なデザインや高価な設備で決まるものではありません。
むしろ、目立たない部分にどれだけ意識を向けているかで、空間の質は大きく変わります。


1つ目は、照明が主張しすぎないこと。
必要な明るさは確保されているのに、照明の存在を意識させない。グレアレス照明や間接照明によって光をやわらかく回すことで、視線が落ち着き、気持ちも自然と静まっていきます。

2つ目は、視線に余白があること。
正面に情報が並びすぎていないこと。線や物が整理されていること。
それだけで、トイレに入ったときの印象は驚くほど変わります。

狭い空間では、一つひとつのアイテムが占める存在感が大きくなります。だからこそ、数を増やすのではなく、手触りや形、素材感にこだわったものを丁寧に選ぶ。
居心地の良さは、何かを足すことで生まれるのではなく、削った余白の中で、選び抜いた要素が静かに際立つことで整っていきます。



施工例①|グレアレス照明と板張りがつくる、静かなトイレ

I様邸のトイレでは、存在を感じさせないグレアレス照明と板張りの仕上げを採用しています。光源が視界に入らないことで、空間に入った瞬間の緊張感が消え、自然と呼吸が整うような感覚が生まれます。メラミン木目貼りも、デザインとして主張するのではなく、空間の背景として静かに存在し、安心感を与えてくれます。

タオル掛けは、アルネ・ヤコブセンとVOLA社のパートナーシップによって誕生した「Vola」シリーズ。これまで空間の雰囲気を妨げることのない、シンプルなヤコブセンのデザインを守り、製品のクオリティを磨き続けてきました。その結果、流行の多様化により製品のライフサイクルが短くなった現代においても、変わらない”design icon”として愛用され、世界でもっとも人気のある水栓のひとつとなっています。※HP説明文引用

洗面の天板などが大理石なので、主張しすぎない、シンプルだけどタイムレスで、洗練されたものを探し、辿り着きました。

ペーパーホルダー・洗面のタオル掛けも、単なる付属品としてではなく、空間との比重をみて、バランスの良いものを選定。小さな空間だからこそ、こうした細部の積み重ねが、空間全体の印象を静かに引き上げてくれます。

グレアレスDLのやわらかな光が、木の質感と陰影を引き立てる。



メラミン木目パネル:JC-517KS98(AICA)
床フロアタイル:IS-2062(サンゲツ)
グレアレスDL:DDL-5426YW(DAIKO)
ペーパーホルダー:BA19039(miratap)
タオル掛け:VLT15R(CERA)


施工例②|間接照明とアクセントクロスで包む、やわらかな空間

Y様邸では、収納の下に間接照明とアクセントクロスを組み合わせ、ダークな空間に、やわらかな奥行きをつくりました。照明はクロスを強調するためのものではなく、素材の凹凸をなぞるように光を落とす役割。

暗く見えますが、入った瞬間に外の空気から切り替わり、気持ちが自然と内側に向かう落ち着いた空間になっています。

ご提案パース


アクセントクロス:RE55115(サンゲツ
収納 大理石シート:ダイノックフィルム ST-2536MTマーブル(3M
・床フロアタイル:IS-2027(サンゲツ)



数分のために、整える理由

トイレは、空間の中でもっとも小さく、もっとも差が表れやすい空間だと思います。限られた面積の中では、光の選び方や素材の使い方、何を置き、何を置かないか。そのすべてが、ダイレクトに空間の印象として現れます。

数分しか滞在しない場所だからこそ、無意識に気持ちが切り替わる質を大切にしたい。
入った瞬間に落ち着く、出るときに少し整う。その感覚は、偶然では生まれません。


なぜか印象に残るトイレは、静かな意図の積み重ねによってつくられています。
小さな空間に向き合い続けた先にこそ、その家らしい居心地が現れてくるのではないでしょうか。

2026年のはじまりに


VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。

本年もVOULOIR DESIGNをどうぞよろしくお願いいたします。

新しい年のはじまりに、改めてあおいさんとこれからの空間づくりについて話し合う時間を持ちました。
その中で、あおいさんと共有したテーマがあります。

それは、「同じ方向を向いて空間づくりをしていくこと」。

あおいさんと仕事を始めて2年半。プロジェクトの数や幅が広がった今だからこそ、あらためて言葉にして確認しておきたいテーマでもありました。

空間づくりは、選択の連続だからこそ

生地を真剣に選ぶあおいさん

空間づくりは、素材、色、家具、照明、配置など、無数の選択の積み重ねで成り立っています。そしてその多くは、「どちらも間違いではない」選択肢の中から決めていくものです。
VOULOIR DESIGNにご依頼いただくお客様の好みもそれぞれ。
だからこそ私たちは、何を選ぶか以前に、どんな方向を目指しているのかを共有することをとても大切にしています。

方向性が曖昧なまま進むと、一つひとつは正しい選択であっても、全体として少しずつズレが生まれてしまうことがあります。

「同じ方向を向く」とはどういうことか


新年のミーティングでは改めて、どこを目指して空間づくりをしているのかについて言葉にする時間を持ちました。

私たちが考える「同じ方向を向く」とは、完成イメージを一つに決めることではありません。

あおいさんが一貫して大切にしているのは、
「きれいに整えること」や「正解を当てにいくこと」ではなく、


その空間でどんな時間が流れ、そこで暮らす人がどんな気持ちで日常を重ねていくのか


という視点です。

そうした、図面や写真だけでは捉えきれない世界観を、一つひとつ言葉にしながら丁寧に共有していくこと。それが、私たちにとっての「同じ方向を向く」ということだと考えています。

この世界観が共有できていると、素材選びや配置に迷ったときにも、「この空間が本当に目指しているのは、どちらだろうか」と立ち返ることができます。

良質な空間を「実際に見る」ということ

ヘーベルハウス駒沢展示場のベッドルーム

言葉で世界観を共有していくことと同時に私たちが大切にしていきたいのが、
良質な空間を、数多く見ることです。

昨年は、住宅メーカーの住宅展示場や、さまざまな家具・照明メーカーのショールームを訪れる機会がありました。

インテリアを検討する時間は、お客様にとって決して十分とは言えません。

だからこそ私たちは、自分たちが実際に空間を見て、感じ、蓄積してきた経験を、お客様の選択に還元することを大切にしています。

2026年に向けて

今年も引き続き、良質な空間や建築に触れる機会を大切にしていきたいと考えています。

前回、あおいさんのブログでは「2025年は苦しかった一年だった」と綴られていました。

けれどその言葉の背景には、
安易な選択や分かりやすい答えに流されず、その空間にとって何が自然なのかを問い続ける姿勢があるように感じています。
(その姿勢は、ストイックとも言えるかもしれません。)

また個人的には、仕事の中だけで完結させるのではなく、自分自身の旅行や日常の中でも心に残る空間に触れ、感覚を更新し続けていくことを大切にしたいと考えています。

2026年も、一つひとつのご縁を大切に、丁寧な空間づくりを続けてまいります。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

【インテリアデザイナーの仕事】苦しかった2025年の振り返り|VOULOIR DESIGN

こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン)のあおいです。
フリーランスのインテリアデザイナーとして仕事を続けてきた中で、2025年は「苦しかった」と言い切れる一年でした。

とにかくあっという間の一年だったので、BLOGで振り返りながら、自分の頭の中を整理したいと思います。仕事の振り返りについては、くるみさんがまとめてくれているので、よろしければこちらをご覧ください。

VOULOIR DESIGN
アシスタントとして見た、VOULOIR DESIGNの一年|2025



インテリアデザイナーとして痛感した知識不足

今年は、自分の中で「知識の少なさ」を強く実感した一年だったと思います。
初めて経験することばかりで、今振り返れば良い経験だったと思えるのですが、当時は食事もあまり取れないほど、日々精神的に追い込まれていました。

とはいえ、フリーランス10年目。
ここまで来る道のりも、毎回七転び八起きで、匍匐前進のように進んできました。その積み重ねがあったからこそ、以前よりも気持ちの切り替えができるようになり、自分の至らなさにきちんと目を向けることができたのだと思います。また、現場では本当に多くの方々に助けていただきました。

だからこそ、来年以降、私が請け負う仕事では、関わってくださる全員が気持ちよく仕事ができる環境をつくることを、これまで以上に大切にしていきたいと強く感じています。

そして何より、クライアントの方と一緒に「いい空間」を築いていくために、デザインだけでなく、それ以外の部分も含めて、日々精進していかなければいけないと感じた一年でした。


自分のスタイルを見直すことの重要性

インドのお客様|ダイニングルームパース


今年は海外のお客様が非常に多く、全プロジェクトの半数以上を占めていました。
その中で衝撃だったのが、「自分の提案スタイルが通用しない場面があったこと」です。
もちろん人にもよりますが、よりスピード感を求められるケースが多く、これまで一度もやったことのない提案方法で、納品まで進んだ案件もいくつかありました。
これまでも、お客様やコンセプトによって提案スタイルを変えることはありましたが、海外のお客様から「自国ではこういう進め方をする」という話を直接聞けたことは、とても興味深い経験でした。
最初は正直戸惑いましたが、結果的に提案のレパートリーが増え、今ではお客様に合わせて新しい提案方法を選択できるようになったと感じています。
振り返ると、とても良い機会に恵まれた一年だったと思います。

知ってもらうことの大切さ

私は正直、SNS発信が得意ではありません。苦手というより、「自分のスタイルを崩したくない」という、少し変なプライドがあるのかもしれません。ただ最近は、フォロワー数をきっかけに仕事につながる機会が増えていることや、海外のお客様の場合、フォロワー数を重視されることも多いと聞くようになりました。

ここ2年ほどでターゲット層を見直し、ペルソナを変えてきたことで、少しずつ理想に近づいている実感はあります。

一方で、「知ってもらうことの大切さ」も、同時に視野に入れていくべきだと感じるようになりました。というのも、知っている業者さんが多いほど選択肢が増え、お客様や現場に合わせて最適なチームを組むことができます。もちろん紹介がいちばん安心で信頼できる方法ですが、そもそも「どんな業者がいるのか」「何が得意なのか」を知っていなければ、選択肢にもなりません。そう考えると、私自身も誰かの選択肢のひとつとして知ってもらうことは、決して無駄ではないのではないかと思うようになりました。

ただし、自分の軸はぶらさない。
自分が「ダサい」と感じることはやらない。
その意味では、やはり変なプライドかもしれませんが、できる限りその方向性で進んでいけたらと思っています。

日本は選択肢が少ない

NY | ROMAN AND WILLIAMS


中国の不動産関係の方やお客様から、「日本はインテリアの選択肢がかなり少ない」と言われたことがありました。正直、それまではあまり疑問に思っていませんでした。クオリティの高いものは時間がかかる。納期が3〜6ヶ月かかるのも「普通」だと、私自身ずっと思っていました。一方で、中国や韓国では、ある程度クオリティが担保された家具でも、数日〜1ヶ月ほどで届くものが多いそうです。


特に中国は工場が多く、家具メーカーの数も豊富で、デザインや品質も一定水準以上のものが多いため、選択肢が非常に広いと聞きました。ラグジュアリー家具メーカーを除くと、日本は中間層、もしくはそれより少し上の価格帯のメーカーが少ないのかもしれない、と感じています。これは中国や韓国に限った話ではなく、海外では「インテリア」が日本よりも生活に近い存在であると、私自身、旅行を通して感じることが多くあります。

価格帯もラグジュアリーほど高くなく、BoConceptより少し上くらいのショップや、もう少し手に取りやすい価格帯のお店が、日本より多い印象です。納期に1年ほど余裕がある案件であれば問題ありませんが、2〜4ヶ月となると選択肢は自然と限られ、すべて造作にすると予算も上がってしまいます。この点は、2025年、とても悩ましいテーマでした。

私自身が、もっと多くのメーカーを知るべきでもあります。
来年はその点も意識しながら、メーカー探しを並行して進めていきたいと思っています。

期待以上の完成度と、安心感

一年を通してとても苦しい時間が続いた中で、心から嬉しい瞬間もありました。実際にお客様からいただいたお言葉です。

「この度は、本当にありがとうございました。私の期待をはるかに超える素晴らしい成果に、胸がいっぱいです。長い時間をかけて真摯に考え、私の話に耳を傾けてくださったことに心より感謝申し上げます。私の想いや考えを、このように形にしてくださったことが、何よりも嬉しいです。」

初回の打ち合わせから納品まで、およそ11ヶ月。ほぼ毎日のように連絡を取り合っていたように思います。賃貸マンションにお住まいのお客様で、造作のソファをご提案しました。
カフェのような、やわらかくアールを描いたソファです。

ご要望を丁寧に伺いながら、日々の生活動線、ご家族それぞれの過ごし方、そして限られた条件の中で、どう解決し、どうデザインに落とし込んでいくのか。とても難しく、そしてとても楽しい仕事のひとつでした。


VOULOIR DESIGNのロゴをつくったとき、「真摯に、地に足をつけて一歩ずつ」という意味を込めていたので、この感想をいただいたとき、その想いが少し実現できたような気がしました。

自分で仕事をしていくうえで、いちばん大切なのはやはり「信頼を築くこと」だと思っています。そのために、特別なことをするのではなく、当たり前のことを、当たり前に、丁寧に積み重ねていくこと。「真摯に、地に足をつけて一歩ずつ」進むことの大切さを、改めて実感しました。

また別のお客様からは、「あおいさんが入ってくれることで、デザインについては安心してお任せできます」というお言葉を、直筆のお手紙でいただいたこともあり、その一言一言が、苦しかった一年を支えてくれた、大切な記憶です。


おわりに

振り返ると、今年はとても苦しい一年でした。同時に、これまでになかった経験や学びを重ねることができた、濃い一年でもあったと思います。うまくいかないことや、自分の未熟さに向き合う場面も多くありましたが、だからこそ「真摯に、一つずつ向き合うこと」の大切さを、改めて実感しました。

近道を探すよりも、地に足をつけて積み重ねていくこと。
それが結局、いちばん遠くまで行ける方法なのだと思います。

来年は、ただ依頼を待つのではなく、自分が本当に受けたい仕事を、自分でつくっていく一年にしたいと考えています。

古き良きものを活かしながら、今の暮らしに寄り添うこと。時間とともに味わいが増し、住まう人の人生に静かに寄り添うインテリアを、より丁寧に形にしていきたいです。

そのために、新しいことにも挑戦していきます。
変わらない軸を大切にしながら、必要な変化を恐れず、一歩ずつ。

来年もまた、真摯に、地に足をつけて。
VOULOIR DESIGNらしい仕事を、積み重ねていけたらと思います。

アシスタントとして見た、VOULOIR DESIGNの一年|2025

こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン)アシスタントのくるみです。
年末が近づき、今年一年を振り返る季節になりました。

私がVOULOIR DESIGNでアシスタントとして働き始めて、今年で2年目になります。
最初の頃は、「インテリアの仕事って、こんなに細かいことまで考えているんだ」と驚くことばかりでした。

完成した空間だけを見ると、とても静かで整って見えますが、 その裏側では、あおいさんと何度も立ち止まりながら、 「これで本当にいいかな?」と考える時間が、実はとても多くあります。今回は、アシスタントとして日々のやりとりや作業を重ねる中で感じたことを、 今年関わったプロジェクトとともに振り返ってみたいと思います。

民泊プロジェクトについて

今年は、8物件・約15部屋の民泊物件に、家具や小物のデザイン提案・納品を行いました。

民泊のプロジェクトでは、オーナー様のご負担をなるべく減らすため、 スピード感のあるデザイン提案と納品が常に求められます。 ただし、早さを優先するからといって、空間の質を落としたくはありません。

あおいさんがよく話しているのは、 「面積や予算で諦めないこと」。

限られた広さの中でも、どうすれば心地よく、使いやすい空間になるか。
毎回、その前提から一緒に考えています。

例えば、TVボードとデスクを兼ねた造作家具をつくり、 スペースを有効活用することで
くつろぐ時間と作業する時間のどちらにも対応できる空間にしたこともありました。

また民泊のプロジェクトでは、 実際に宿泊される方の顔が見えない分レビューや評価という形で反応をいただけることも大きな特徴です。

完成後に高評価のレビューを目にしたときは、 見えないお客様にも、ちゃんと空間が届いているのだと感じられ、 この仕事ならではの喜びを教えてもらいました。

マンションモデルルームについて

年初めには、関東近郊にあるマンションモデルルームにも携わらせていただきました。

モデルルームの仕事は、想像以上に長丁場です。 お話をいただくのは完成の半年ほど前。
そこからまずは、複数のインテリアイメージを提案し、その中から方向性を絞っていきます。

イメージが固まってからは、家具の具体的な提案を行い、 オーナー会社様へのプレゼンテーション、そして何度もの修正。 一つ決まるたびに、また全体を見直す、という作業の繰り返しです。デザインが決まると、次は小物の選定や買い出し、予算の管理なども始まります。 民泊や住宅の仕事とはまた違った気の使い方が求められ、 細かな調整が続く期間でもありました。

その一方で、 家具だけでなく、小物まで含めて空間全体を検討できることは、 モデルルームの仕事ならではの魅力だと感じています。時間をかけて少しずつ形になっていく過程を間近で見られたことは、 アシスタントとしても、とても印象に残る経験でした。

特に多かった、海外のお客様とのプロジェクト

昨年から、海外向けの不動産会社の方とお仕事をする機会が増え、 それに伴い、海外のお客様とのプロジェクトも多くなりました。海外のお客様とは言語が違う分、 日本のお客様以上に認識のズレが生まれないよう気をつけながら進めています。 ご提案資料も、日本語だけでなく、英語や中国語など、 その方に合わせた形で用意することが多くありました。

あおいさんとのやりとりの中でも、さっきの説明、伝わってたかな もう少し分かりやすくまとめ直そうか、と話すことがよくあります。私はその言葉を受けて、資料を整理し直したり、補足を加えたりしながら、 認識のズレが生まれないようサポートします。


また、海外のお客様はご要望をストレートに伝えてくださることが多く、 こちらの伝え方や受け取り方についても、 とても勉強になる場面が多かったように思います。完成後にいただいた反応を通して、 距離や文化を越えて、ちゃんと想いが届いたのだと感じられたことは、 強く印象に残っています。

アシスタントとして近くで見て感じたこと

一年を通して私が強く感じたのは、 あおいさんがデザインを「正解を当てにいかない」ということです。流行っているから。 写真映えするから。 そういった理由だけで決めることは、ありません。代わりに、この人にとって、これは自然かな。 何年か使ったときも、違和感はないかな。と、何度も立ち止まって考えています。アシスタントとしてその姿勢をすぐそばで見られたことは、 私自身にとっても、大きな学びでした。

また来年は、あおいさんの好きな「古き良き」という価値観を、 より大切にできるような仕事にも挑戦していけたらと、密かに思っています。古民家再生や、自社での民泊リノベーションなど、 時間を重ねてきたものの魅力を活かしながら、 今の暮らしに合う形へ整えていくようなプロジェクトにも、 関わっていけたら嬉しいです。

おわりに

こうして振り返ってみると、 今年もたくさんの「考える時間」を積み重ねてきた一年だったように思います。来年もまた、 一つひとつの空間と、その先にいる人に向き合いながら、 あおいさんの仕事を支えていけたらと思っています。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

家づくりでいちばん誤解されているもの|光にお金をかける意味

こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。

家づくりやインテリアのご相談を受けていると、多くの方が同じような言葉を口にされます。

「照明は、とりあえず明るければいいですよね」
「最後に予算が余ったら考えようと思っています」

間取りや床材、キッチン、家具…ひとつひとつに悩み、時間をかけて選んできたのに、照明だけは「後でいいか」と無意識に脇へ置かれてしまう。でもその違和感こそが、住み始めてから「なんとなく落ち着かない」「思っていた雰囲気と違う」という感覚につながっているのではないかと感じることがあります。

家づくりの中で、いちばん誤解されているもの。それは、照明かもしれません。

今回は、イタリアの照明メーカーArtemide(アルテミデ)の新作を拝見するため、ショールームを訪れました。その体験を通して、「光にお金をかける」という選択が、暮らしの質をどのように変えていくのかを考えてみたいと思います。

またVOULOIR DESIGNでは、これまでにも照明の選び方についてお伝えしてきました。
あわせてこちらの記事もご覧ください。

VOULOIR DESIGN
VOULOIR DESIGNの裏側:灯りが空間を決める!照明器具の選定
VOULOIR DESIGN
VOULOIR DESIGNの裏側:灯りが空間を決める!照明器具の選定②



Artemideがつくっているのは「器具」ではなく「光の質」

アルテミデは、世界的に評価されているイタリアの照明ブランドです。
ただ形が美しい照明というだけではなく、心地よい光とは何かという問いに向き合っている照明メーカーの一つだと思います。


・眩しさを感じにくい配光
・必要な場所だけを、必要な分だけ照らすこと
・空間の雰囲気を壊さず、静かに輪郭を整える光


主張しすぎないデザインが多いのも、照明そのものを目立たせたいのではなく、光によって空間全体のバランスを整えたいという思想があるからだと感じます。


印象に残った照明たち

今回印象に残ったのは、どの照明も「置けば映えるオブジェ」で終わらず、使われる空間まで想像されているという点でした。

新作の「Zephyr(ゼファー)

ダイニング用のペンダントライトでよくあるのが、光が一点に集中してしまうという難点です。1灯タイプの照明では、テーブル中央だけが強く照らされ、端に座る人の手元は意外と暗くなってしまうことも少なくありません。

Zephyr(ゼファー)は見た目の美しさだけでなく、6つの光源がバランスよく配置されており、ダイニングテーブル全体をフラットに、均一に照らしてくれるつくりだと感じました。

Unterlinden(ウンターリンデン)」HPより

Unterlinden(ウンターリンデン)は、スタンドやペンダントなど多様なバリエーションを持つ照明ですが、中でも壁付けタイプは、今回とくに印象に残ったひとつでした。

特徴的なのは、紐を引くことで高さを調整できること。
空間全体をやさしく照らしたいときも、読書などで手元に光が欲しいときも、シーンに合わせて光の位置を変えることができます。また、アルミや真鍮でつくられた本体は、仕上げがひとつひとつ微妙に異なり、すべてが一点もの。工業製品でありながら、素材の表情や経年変化まで楽しめる照明だと感じました。

NETFLIX イカゲームとのコラボも

「明るい=良い照明」ではないということ

住宅でよく見かける、天井一面のダウンライト。確かに明るさは確保できますが、それが必ずしも心地よさにつながるとは限りません。

照明には、空間の奥行きをつくり、視線を導き、気持ちを切り替える役割があります。

アルテミデの照明は、「照らすための光」ではなく空間を整えるための光だと強く感じました。

照明は「あとで考えられる」ものではない

照明は「住んでから替えればいい」と思われがちですが、
実際には配線や天井・壁の納まり、家具配置と深く関係します。

後から考えるほど、「ここには付けられない」「思っていた雰囲気にならない」というズレが生まれやすくなります。

照明こそ、間取りや素材と同じタイミングで考えるべきものだと、私たちは考えています。

照明にお金をかけるという選択について

照明にお金をかけることは、高価な器具をたくさん使うことではありません。本当に必要な場所に、質の良い光を、適切な数だけ配置すること。そうすることで、無駄な照明が減り、空間はむしろ静かでシンプルになります。

アルテミデの照明に触れ、照明は「最後の仕上げ」ではなく、暮らしの土台をつくる要素なのだと、改めて実感しました。もしこれから家づくりやインテリアを考えるなら、照明を後回しにせず、ぜひ最初の段階から一緒に考えてみてください。VOULOIR DESIGNでは、暮らしのイメージに寄り添いながら、空間全体を整える照明計画をご提案しています。

洗練された空間とは|ニーディック&モルテーニSR見学

こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
先日、インテリアの素材や家具の世界観を学ぶために、「NEED’K textile」と「PALAZZO MOLTENI TOKYO」のショールームを見学してきました。
どちらも方向性はまったく異なるのですが、それぞれのこだわりや表現力が強烈に印象に残ったので、ここではその体験をまとめてみたいと思います。

生地と素材に込められた圧倒的な探究心


まず訪れたのは、テキスタイルの専門商社であるニーディック。ショールームに足を踏み入れた瞬間から「生地」そのものに対する愛情やこだわりが伝わってきます。
SRを見学しながら、革のラグ(カウハイド)に関する説明をしてもらいました。天然素材ゆえの美しさを持ちながら、扱いには細心の注意が必要。ロボット掃除機は毛が抜けてしまうのでNG、床暖房の熱も避ける必要があり、掃除も強くかけるのではなく軽く。一般的に「ラグは掃除機でガンガンかけられるもの」と思いがちですが、素材の持つ個性に合わせたケアが大切だということを改めて感じます。

カウハイドラグ 「NEED’K textile」HPより

ニーディックは様々な工場で生地を製作しています。その特性が活かされた代表的な生地が、プリーツ加工の「トランスダプリーツ」なんとイッセイミヤケの服と同じ工場でつくられているそうで、ファッションとインテリアがつながる瞬間にとてもわくわくしました。実際に見たプリーツはパリコレに登場しそうな存在感で、「これがカーテンになるの?」と思わせるほど美しく、テキスタイルの可能性を強く感じました。

さらに「ワシボンディング」というウールと和紙を圧着させた素材も印象的でした。和紙の軽やかさとウールの温かみが融合し、独特の風合いを生み出しています。モダンな住宅が増える中で、こうした“日本らしい素材”を取り入れると、空間に深みが出てとても素敵だと感じました。

「トランスダプリーツ」のカーテン

「ワシボンディング」で作ったスリッパ

わくわく中のあおいさん



またニーディックではクッションカバーや生地を使ったアートなどの販売もあり、個人邸だけでなくショールームや商業空間のお仕事にも活かせそうな小物がたくさん揃っていました。

空間全体で感じる世界観

PALAZZO MOLTENI TOKYO」HPより


次に訪れたのは青山にあるモルテーニの旗艦ショールーム「PALAZZO MOLTENI TOKYO」。ベルギー人建築家ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンが手掛けた日本初の建築で、地下1階から地上3階まで、計4フロアにわたる大きなスケール感に圧倒されました。最上階には“ヴァン・ドゥイセンの家”を再現した特別なフロアがあり、まるで彼の暮らしそのものを体験できるような仕掛けになっています。

扉を開けた瞬間、空気が変わったように感じました。家具をただ並べるのではなく、空間そのものを舞台装置のように組み立て、ブランドの世界観を丸ごと体感できるようになっているのです。

モルテーニの家具は、一見シンプルなのに存在感が圧倒的。直線的なフォルムに素材感や色の合わせ方が加わり、「上質」という言葉が自然と浮かんできます。


やはり印象的だったのは、最上階“ヴァン・ドゥイセンの家”の空間の演出。壁面収納やキッチン、ワークスペースにまで巧みに仕込まれた間接照明が、素材の陰影を際立たせて奥行きを生み出していました。照明の配置や動線の計算も行き届いていて、「ここで暮らしたら」というイメージがどんどん膨らみます。モノを売るのではなく、ライフスタイルを提案する姿勢が徹底されていました。

暮らしに活かせる洗練の学び

今回の見学で強く感じたのは、ニーディックとモルテーニがまったく異なるアプローチを取りながらも、どちらも「暮らしをより豊かにする」という一点に真剣であったことです。

ニーディックは「素材と技術」を突き詰め、生地の一枚一枚に物語があり、選び方ひとつで空間の表情や住まい方までも変わることを実感させてくれました。

一方、モルテーニは「世界観と空間演出」を重視し、家具単体の美しさを超えてライフスタイル全体を提案しています。間接照明や空間設計によって、日常がより上質に感じられる体験をつくり出していました。

洗練された空間とは、素材の深い探究とトータルな空間演出が交わったところに生まれるのだと思います。これはお客様にとっても、暮らしを見直すヒントになります。そして必ずしもこの2つのブランドの家具やカーテンを取り入れなくても大丈夫。お気に入りの素材や、照明の工夫、空間の整え方次第で“洗練”を暮らしに取り入れることができるのです。家具や生地を選ぶ際には「素材の持つ特性」と「空間全体の調和」の両方を意識することで、毎日の生活がぐっと心地よいものになるのではないでしょうか。ぜひ一緒に、空間づくりを楽しんでいきましょう。

日本建築の奥深さと現代デザインへのつながり

日本建築に触れると、不思議と懐かしさを感じることがあります。襖を開ければ空間がつながり、外と内が自然とつながるような空間。そこで過ごしたことが無いのに、なぜノスタルジックな気分になるのでしょうか。

たとえその建築文化の中で育っていなくても、どこか心に響く感覚。それは、日本の建築が持つ“奥ゆかしさ”と、素材や空間の繊細な組み合わせによって生まれるからだと思います。


素材の組み合わせが生む美しさ

最近、インバウンドで観光客が多く訪れたことにより、「私、やっぱり日本(日本人)大好きだ」と再確認しました。そこでもっと自国について勉強したくなり、最近は日本建築の本を読んでいます。

日本建築では、木・紙・石・土といった自然素材が絶妙に組み合わされ、空間に温かみと静けさをもたらしていると私は思います。
例えば、木の梁と漆喰の壁、障子の柔らかい光と畳の触感。この組み合わせの妙は、単なる装飾ではなく、暮らす人の感覚に寄り添うための知恵でもあり、こうした素材の“掛け合わせ”の発想は、私が手がけるVOULOIR DESIGNのインテリアにもきちんと落とし込んでいきたいと思いました。
自然素材を生かしながら、現代の生活にフィットする空間をつくることは、日本建築が培ってきた思想の現代的応用だと言えるでしょう。


明治時代からの建築家の歩み

興味深いことに、明治時代の初め、建築家と呼ばれる人はほとんど存在していないことを本で読み、西洋建築が急速に導入される中で、日本の建築は職人や大工の技術に依存していました。しかし時代が進むにつれ、今では世界で活躍する日本人建築家が登場し、国際的な評価を得るまでになりました。

例えば、安藤忠雄さんや隈研吾さんの建築は、日本の素材感や光の扱い、空間の余白の美学を世界に伝えています。これは、伝統的な日本建築の精神が現代のデザインにも生き続けている証拠なのかなと。
※もっとたくさん名前をあげたいですが割愛


日本建築とVOULOIR DESIGNの共通点


日本建築の奥ゆかしさや素材感を現代の暮らしに落とし込むことは、VOULOIR DESIGNの大切にしたい部分とも深く通じていくべきだと思っています。

・空間の余白を大切にする
・素材の質感を生かす
・光と影を計算して心地よさをつくる

これらはすべて、日本建築の思想から学べる要素です。私たちのデザインも、過去の知恵を尊重しながら、現代のライフスタイルに合わせて再解釈していきたいです。


こちらの記事を見ていただけると、より分かりやすいかと思います。

インテリアデザイナー|HMで家を建てるまで③

ONとOFFがほどよく共存する、上質な住まい – 横浜・片倉マンションリノベの記録

おわりに

日本建築の魅力は、単に“古い建物”にあるのではなく、素材や空間の繊細な調和、そして人の感覚に寄り添う思想にあります。

その美学は、現代のインテリアデザインにもしっかりと息づいており、VOULOIR DESIGNの中にもその精神をより大切にし、さらに現代らしい素材も組み合わせていきながらONとOFFの共存を目指していきます。

日本建築の奥ゆかしさを知ることは、私たちが暮らす空間の美しさや心地よさを再発見することにつながると思うので、さらに日本建築について追求していきたいです。

お風呂を超えてー暮らしをデザインする造作浴室

こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。

先日、オーダーメイドバスルームブランド BAINCOUTURE(バンクチュール) の見学をしてきました。ここには様々な造作浴室の展示があるのですが、お風呂を単なる「箱」としてではなく、暮らしの動線やシーンの一部として計画されているのがユニークなショールームだったのでぜひこの体験をシェアしたいと思います。


まずショールームに入ると、入り口横にはキッチンカウンターを模した受付があり、その前にソファなどのリビング空間があります。その先に広がる浴室たちは“暮らし”を思わせるつくり。キッチンやリビングに自然につながる雰囲気で、体験のはじまりから浴室を生活の延長として意識させてくれます。

ここからはブランドの紹介や造作浴室の工法の違い、実際の素材感などに詳しく説明していきます。

BAINCOUTURE(バンクチュール)HPより 東京ショールームエントランス


「BAINCOUTURE」の意味


「BAIN(フランス語でバス)」+「COUTURE(仕立て)」を掛け合わせた造語で、“一人ひとりの暮らしに仕立てるバス空間” を意味します。
ユニットバスメーカーであるNIKKOが立ち上げたブランドで、浴室を単なる水回りではなく住まいの中心となるリビングのような存在へと進化させていきたいのではという意図を感じます。

施工例としては、トレーニングルームの隣に浴室を配置したり、洗面所やドレッシングルームと連続的につなげたりするケースが多く見られます。入浴という行為そのものではなく、入浴前後の時間を含めた“暮らし方”をデザインしているブランドだと感じました。

BAINCOUTURE(バンクチュール) HPより シームレスに繋がる洗面と浴室

在来工法とユニットバスの違い

造作浴室というと、昔ながらの在来工法を思い浮かべる方も多いかもしれません。

実際私もショールームにお邪魔する前はBAINCOUTURE(バンクチュール)は在来工法の会社だと思っていました。



BAINCOUTUREはその両方のメリットを取り入れたスタイル。ユニットバスの安心感をベースにしながら、在来工法のように素材やデザインを自由に選べるため、「デザイン性 × 機能性」を兼ね備えています。

浴室は長期的に見て、水漏れなどを防ぐメンテナンス性が非常に重要な空間です。

実際にバンクチュールで最初に受けた説明も、このユニットバスの工法についてでした。デザイン性だけでなく、そうした安心面を重視している点に強い好感を持ちました。

実際に見て触れて感じたこと

ショールームには数々の浴室がありますが、特に印象的だったのは御影石の浴室でした。石にはさまざまな磨き方がありますが、水磨きと呼ばれる仕上げが施されており、手で触れると驚くほど滑らかで、ほんのり冷たさが心地よく、ホテルスパのような非日常感が広がります。本磨きとの違いは、実際に触れてみないとわからないものです。


一方で、檜(ひのき)の壁やベンチは、香りの豊かさと温かみが魅力的。天然素材ということで長年使うとカビなど生えるのでは、、、と思っていたのですが、意外と10年以上メンテナンスしていないケースも多いそう。また鉋で削れば新品同様に蘇り、隙間も埋め直すことができるそうです。

御影石の浴槽と檜の縁

照明の工夫も印象的でした。間接照明が石や木をやさしく照らし出し、空間に立体感を与えます。昼は自然光で素材の素顔を楽しみ、夜は照明による演出で非日常を味わえる─まさに「二面性を持つ浴室」。ダウンライトも最近はグレアレスしか提案していないとのことでした。

ショールームには多様なニッチがありました。これがまたデザインの見どころ。

シャンプーニッチ:ボトル類をすっきり収め、掃除もしやすい。

アートニッチ:花やアロマを置けば、バス空間がギャラリーのように。

照明付きニッチ:夜にはやわらかく光り、ラグジュアリー感を演出。


素材やサイズ、照明の有無によって雰囲気がガラリと変わり、「浴室での過ごし方」がデザインされていると感じました。

メンテナンスも大事な要素

造作浴室は見た目が華やかですが、素材に合わせたケアが不可欠とのこと。


「ずっと新品であり続ける」のではなく、メンテナンスを重ねながら経年変化を楽しむのも、造作浴室の醍醐味。


入浴を含めた“新しい過ごし方”を創る

今回の体験で強く感じたのは、BAINCOUTURE(バンクチュール)のコンセプトが、浴室を単なる箱(バスルーム)としてではなく、入浴前後の時間や空間を含めた自宅での“新しい過ごし方”を創り出しているということ。御影石の重厚感、檜のやわらかさ、光とニッチの演出……どれもが「自分らしい暮らしに仕立てられた空間」として心に残りました。

人によってはかなり長い時間を過ごす浴室。自宅に取り入れる際は、設計段階で「素材の肌あたり」「光の演出」「収納やニッチの使い方」をじっくり検討することが大切です。

これから浴室を検討される方にとっても、“浴室という空間をどう使いたいか”という視点を持つことで、より自分らしい暮らしに近づけるのではないでしょうか。

インテリアデザイナー|HMで家を建てるまで③


ブルワールデザイン(VOULOIR DESIGN)あおいです。昨年8月ごろから積水ハウスにて新居を計画し、4月末に引き渡しされました。自分がクライアントになるのが初めてだったので、色々な気付きと、失敗がありとても勉強になりました。

今回は自宅のコンセプトについてお話しします。

ONとOFFの共存

我が家のコンセプトは弊社のコンセプトでもある「ONとOFFの共存」がキーワードです。くつろげるけど、どこか緊張感と高揚感も欲しい。相反する感情と、それを叶える間取りと、素材を取り込むことで自分らしくいられる空間をデザインしました。

この対となる部分が自分の中でとても大切にしている部分で、私たちはポジティブな時と、ネガティブな時、両方の感情の中で毎日暮らしています。その中で笑って、泣いて、もがきながら日々過ごしていった先に「その人らしさ」が作られていくと思っています。

その「らしさ」って唯一無二なものですし、その人だけの「味」。対となる感情の中で生み出されたものを、空間にも取り入れることで、さらにその人らしい唯一無二の空間になるのではと思っています。見た目がオシャレというだけでなく、デザインと機能性、そこに寛ぎと少しの緊張感、高揚感を持たせ、そこで暮らす人がさらに、その人らしさという人間味を重ねていって欲しいです。

今回自宅が完成して、私らしさが思いっきり出てると思いました。そしてその中で暮らす日々は、やっぱり居心地が良く、新築なのに「真新しくない、どこか懐かしい」という感情になることもわかりました。

個人的にかっちり整頓されたモデルルームのような空間で暮らすのが苦手で、「新築だとその空気感が出てしまうなー」と考えていました。「自分が何を見たり、触ったりしたらその空気感を壊すことができるのか」と日々ぼーっと考えていた時、どこの誰が使ってきたか分からない古道具に心惹かれることに気がつきました。

なぜ好きなのか。新品のものも好きですが、どこかに人のツヤみたいなものがあると、空気が和らぐような気がしています。たとえば昔ながらの喫茶店。タイルや内装の木材の色、不特定多数のお客さんが歩いた床や座った椅子、コーヒーのしみがついたメニューやテーブル。そういったものが初めてきたのにも関わらず「懐かしい」という感情が私の中にあります。この「懐かしい」を新築に取り入れたかったのです。

ただ全てをこれで揃えると私らしさとは違うなと。前述でもあったように新しいものも好きなんです。新しいものと、人のツヤがあるもの。この対となる素材が組み合わさることが、私らしくいられる空間でもあり、私らしさを表していると思います。



素材の話

何か一つでも本物を入れたい。という決め事はありました。本物っていうのは木目調ではなく、無垢だったり、塗り壁風ではなく、漆喰など。全てフェイクのもので揃えると、どこかチープ感が出てしまうのと、空気感も全く違う。このことに気がついたのは2022年にいった箱根リトリートでした。

そこはカラマツの無垢材が床材に使用されていて、ベッドから素足で床に触れた時の感触と感動は今でも覚えています。こんなにも素材が違うだけで気持ちが高揚するのかと。

そこからリアルな素材に惹かれるようになって、いつか自宅を建てるときは大切にしようと思いました。


結果的こういった素材を揃えています。




他は標準の壁紙やメラミン素材もトイレの壁に使用しているのですが、上記の素材があるだけで空気感はだいぶ違うと思います。



もちろん本物の素材を取り入れることは、メンテナンスが大変と思うかもしれません。
ただ私的にはこの空気感を出せるのであれば、それは全く苦にはならず、今回自宅に取り入れて大正解でした。


インテリアの話

「家具にお金をかけることができない」

そういう声をいただいたことも多々あります。実際に注文住宅をデザインしてみて、費用がこんなにもかかるのかと、正直思いましたし、これは家具に予算を回せない気持ちも分かります。


ただ、やはりどこに何を置くのか。設計段階で決めていかないと、理想の生活シーンを作ることはできないと改めて実感しました。


我が家は主人が塊根植物が大好きで、それを中心とした家づくりになっています。


室内に飾る時と、冬以外は外に出すことがあるので、それを眺めながらゆっくりと過ごしたいという願望がありました。




そうなってくると、ソファのレイアウトや、動線確保をした際の残寸法、それにあう商品選び。ない場合は造作のテレビボードの奥行きを50mm少なくしてみる…など理想の生活シーンから考えて家具を選ばないといけません。なので家具を同時進行で考えることが、ものすごく大事なことだと私は思います。


実際暮らしてみて、何ヶ月も毎週9時間の打ち合わせをした甲斐あり、理想の生活シーンを過ごすことができ主人は嬉しそうです。


改めて空間をデザインすることが、ものすごく労力がかかること、そして私たちの生活に及ぼす影響が大きいこと。色々ありますが大変な作業だなと思いました。

まだまだまだまだ未熟ではありますが、自分が自邸デザインをしたことで得たことと、いちクライアントとして経験したことを還元できたらと思います。

インテリアが家に命を吹き込む──ヘーベルハウス駒沢展示場で感じたこと

こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。

先日、「一般社団法人インテリアクリエイターズ協会」のイベントで、東京・世田谷でオープンしたヘーベルハウス駒沢展示場を見学してきました。家具や小物のスタイリングを担当されたのは、インテリアスタイリスト・窪川勝哉さん

あおいさんは協会の事務局として参加し、私はアシスタントとして勉強のために同行させていただきました。ものすごく学びの多いイベントだったので、みなさんとぜひシェアさせてください。

本記事では、駒沢住宅展示場で実際に感じた“暮らしを彩るヒント”や“インテリアスタイリングのコツ”を、写真付きでご紹介します。これから住宅づくりやインテリアのブラッシュアップを考えている方にも参考になれば嬉しいです。

外観写真:ヘーベルハウス公式HPより引用

展示場に入る前から感じたのは、この建物が放つ独特の存在感。
無駄をそぎ落とした直線的な構造と、素材の質感が際立つ「普遍的な箱」としての強さを感じました。

建築 × スタイリングのバランス

この展示場に足を踏み入れてまず感じたのは、空間としての“圧倒的な完成度の高さ”でした。建築がしっかりと作り込まれていながらも、インテリアが自由に呼吸できるような“余白”がきちんと確保されている。

前職がハウスメーカーだったこともあり、これまでいくつかの展示場を見てきましたが、これほどまでにそのバランスが取れた空間には、なかなか出会えないように思います。

その中で特に印象に残ったのが、「建築で作りすぎない」という考え方。

主役はあくまで“暮らし”であり、建築はその背景としてそっと支える存在として設計されている。

あえてミニマルに設計された「箱」の中に、家具や小物、アートが加わることで、その人らしい空気や物語が立ち上がっていく。その潔さが空間に奥行きを生み、訪れる人の中に「自分ならどんな暮らしをここで描くだろう」と問いかけてくるようでした。

また、スタイリングにおいては「直線的な建築に対して、曲線を意識した家具を取り入れることで空間に柔らかさを加える」という窪川さんの言葉が、とても印象的でした。

丸みを帯びたテーブルや、背もたれにカーブのあるチェアなど、そうした“曲線”が空間にやさしさとぬくもりを与えているのを感じました。

直線的な建築に、曲線を意識した家具で柔らかさをプラス。

ヘーベルハウスは強固な構造が特徴のハウスメーカーです。

建築の持つ構造的な「強さ」と、家具がもたらす穏やかで人間らしい「曲線」。

「硬」と「柔」とのバランスが取れていることで、空間全体が調和し、居心地の良さが自然と生まれるのだと実感できました。

色のリレーションがもたらす心地よさ

もう一つの気づきは、空間に散りばめられた「色のリレーション」

たとえば、さりげなく飾られた植栽の葉先に入っていた赤が、キッチンに置かれたグラスとリンクしていたり。
一見すると気づかないようなトーンのつながりが、空間全体にリズムと一体感をもたらしていました。こうした繊細な調和を意識できるのは、まさにプロフェッショナルならではの視点だと感じました。

家具で仕切る、変化に強い空間づくり

リビングの隅に設けられたワークスペースは、まさに最近の住宅事情を反映した提案です。

壁を立てるのではなく、家具によって緩やかに仕切ることで、空間の用途を後から変えられる“可変性”が生まれます。仕事、趣味、子どもの勉強スペースなど、家族構成やライフスタイルの変化に柔軟に対応できる点が、とても魅力的でした。

展示場には、こうした“営業トークに使える工夫”が随所に散りばめられています。展示場案内の際に営業担当の方が説明しやすいよう、視覚的に伝わる仕掛けが空間に組み込まれていて、それを一つずつ見つけていくことも、この展示場見学の面白さだと感じました。

こだわり抜かれた小物の数々

また、スタイリングで特に心を惹かれたのは、小物の選び方とその配置。それぞれがただの装飾ではなく、空間に物語を宿すための“キーアイテム”として選ばれていました。ひとつひとつに込められた意図を聞くだけでも、窪川さんの空間づくりに対する哲学が伝わってきます。

なかでも印象的だったのが、部屋の一角に飾られていた錫箔のアート。光をあまり取り込めない壁面に、あえて鈍い光を反射する素材を配置することで、自然光との繊細なコントラストが生まれていました。

光の入り方や反射の具合まで逆算して、小物やアートが選ばれているのが空間から伝わってきます。スタイリングとは、単にモノを置くことではなく、“空間にどう作用させるか”“どんな感覚を残すか”まで緻密に構築された空間演出なのだと、改めて感じました。

個人的にツボだったお相撲さんドアストッパー

スタイリングの引き出しを増やす

「空間に余白を持たせる」「色のリンクを意識する」「丸みでやわらかさを加える」
こうした要素を、自分の提案の中にも自然に落とし込めるよう、これからも現場の経験を積んでいきたいと感じました。

そして何より、他の現場を見ることで自分の中の“当たり前”がアップデートされる感覚がありました。
自分が普段使っているアイテムでも、配置や組み合わせを変えるだけでこんなにも違う印象になるのかと、新しい視点が加わったような気がします。

空間に“感情”を宿すということ

今回の見学で得た一番の気づきは、インテリアは単なる装飾ではなく、空間に“感情”を宿すための装置のような存在だということです。建築がどれほど美しく整っていても、そこに置かれるものの意味や、空間に漂う空気感、触れることで伝わる質感がなければ、人の心に届く空間にはならない。

窪川さんが演出するインテリアは、一つ一つが感情や記憶に働きかける、トリガーのような存在になっている──そんな感覚を強く持ちました。

家具、小物、アート。それぞれが空間と溶け込み、住む人の感情やライフスタイルと結びついたとき、ようやく“住まい”としての温度が生まれる

この感覚を忘れずに、今後のスタイリングや提案にも活かしていきたいと思います。