洗練された空間とは|ニーディック&モルテーニSR見学
こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
先日、インテリアの素材や家具の世界観を学ぶために、「NEED’K textile」と「PALAZZO MOLTENI TOKYO」のショールームを見学してきました。
どちらも方向性はまったく異なるのですが、それぞれのこだわりや表現力が強烈に印象に残ったので、ここではその体験をまとめてみたいと思います。
生地と素材に込められた圧倒的な探究心
まず訪れたのは、テキスタイルの専門商社であるニーディック。ショールームに足を踏み入れた瞬間から「生地」そのものに対する愛情やこだわりが伝わってきます。
SRを見学しながら、革のラグ(カウハイド)に関する説明をしてもらいました。天然素材ゆえの美しさを持ちながら、扱いには細心の注意が必要。ロボット掃除機は毛が抜けてしまうのでNG、床暖房の熱も避ける必要があり、掃除も強くかけるのではなく軽く。一般的に「ラグは掃除機でガンガンかけられるもの」と思いがちですが、素材の持つ個性に合わせたケアが大切だということを改めて感じます。

カウハイドラグ 「NEED’K textile」HPより
ニーディックは様々な工場で生地を製作しています。その特性が活かされた代表的な生地が、プリーツ加工の「トランスダプリーツ」なんとイッセイミヤケの服と同じ工場でつくられているそうで、ファッションとインテリアがつながる瞬間にとてもわくわくしました。実際に見たプリーツはパリコレに登場しそうな存在感で、「これがカーテンになるの?」と思わせるほど美しく、テキスタイルの可能性を強く感じました。
さらに「ワシボンディング」というウールと和紙を圧着させた素材も印象的でした。和紙の軽やかさとウールの温かみが融合し、独特の風合いを生み出しています。モダンな住宅が増える中で、こうした“日本らしい素材”を取り入れると、空間に深みが出てとても素敵だと感じました。

「トランスダプリーツ」のカーテン

「ワシボンディング」で作ったスリッパ

わくわく中のあおいさん
またニーディックではクッションカバーや生地を使ったアートなどの販売もあり、個人邸だけでなくショールームや商業空間のお仕事にも活かせそうな小物がたくさん揃っていました。
空間全体で感じる世界観

「PALAZZO MOLTENI TOKYO」HPより
次に訪れたのは青山にあるモルテーニの旗艦ショールーム「PALAZZO MOLTENI TOKYO」。ベルギー人建築家ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンが手掛けた日本初の建築で、地下1階から地上3階まで、計4フロアにわたる大きなスケール感に圧倒されました。最上階には“ヴァン・ドゥイセンの家”を再現した特別なフロアがあり、まるで彼の暮らしそのものを体験できるような仕掛けになっています。
扉を開けた瞬間、空気が変わったように感じました。家具をただ並べるのではなく、空間そのものを舞台装置のように組み立て、ブランドの世界観を丸ごと体感できるようになっているのです。
モルテーニの家具は、一見シンプルなのに存在感が圧倒的。直線的なフォルムに素材感や色の合わせ方が加わり、「上質」という言葉が自然と浮かんできます。




やはり印象的だったのは、最上階“ヴァン・ドゥイセンの家”の空間の演出。壁面収納やキッチン、ワークスペースにまで巧みに仕込まれた間接照明が、素材の陰影を際立たせて奥行きを生み出していました。照明の配置や動線の計算も行き届いていて、「ここで暮らしたら」というイメージがどんどん膨らみます。モノを売るのではなく、ライフスタイルを提案する姿勢が徹底されていました。


暮らしに活かせる洗練の学び
今回の見学で強く感じたのは、ニーディックとモルテーニがまったく異なるアプローチを取りながらも、どちらも「暮らしをより豊かにする」という一点に真剣であったことです。
ニーディックは「素材と技術」を突き詰め、生地の一枚一枚に物語があり、選び方ひとつで空間の表情や住まい方までも変わることを実感させてくれました。
一方、モルテーニは「世界観と空間演出」を重視し、家具単体の美しさを超えてライフスタイル全体を提案しています。間接照明や空間設計によって、日常がより上質に感じられる体験をつくり出していました。
洗練された空間とは、素材の深い探究とトータルな空間演出が交わったところに生まれるのだと思います。これはお客様にとっても、暮らしを見直すヒントになります。そして必ずしもこの2つのブランドの家具やカーテンを取り入れなくても大丈夫。お気に入りの素材や、照明の工夫、空間の整え方次第で“洗練”を暮らしに取り入れることができるのです。家具や生地を選ぶ際には「素材の持つ特性」と「空間全体の調和」の両方を意識することで、毎日の生活がぐっと心地よいものになるのではないでしょうか。ぜひ一緒に、空間づくりを楽しんでいきましょう。
日本建築の奥深さと現代デザインへのつながり
日本建築に触れると、不思議と懐かしさを感じることがあります。襖を開ければ空間がつながり、外と内が自然とつながるような空間。そこで過ごしたことが無いのに、なぜノスタルジックな気分になるのでしょうか。
たとえその建築文化の中で育っていなくても、どこか心に響く感覚。それは、日本の建築が持つ“奥ゆかしさ”と、素材や空間の繊細な組み合わせによって生まれるからだと思います。
素材の組み合わせが生む美しさ
最近、インバウンドで観光客が多く訪れたことにより、「私、やっぱり日本(日本人)大好きだ」と再確認しました。そこでもっと自国について勉強したくなり、最近は日本建築の本を読んでいます。
日本建築では、木・紙・石・土といった自然素材が絶妙に組み合わされ、空間に温かみと静けさをもたらしていると私は思います。
例えば、木の梁と漆喰の壁、障子の柔らかい光と畳の触感。この組み合わせの妙は、単なる装飾ではなく、暮らす人の感覚に寄り添うための知恵でもあり、こうした素材の“掛け合わせ”の発想は、私が手がけるVOULOIR DESIGNのインテリアにもきちんと落とし込んでいきたいと思いました。
自然素材を生かしながら、現代の生活にフィットする空間をつくることは、日本建築が培ってきた思想の現代的応用だと言えるでしょう。
明治時代からの建築家の歩み
興味深いことに、明治時代の初め、建築家と呼ばれる人はほとんど存在していないことを本で読み、西洋建築が急速に導入される中で、日本の建築は職人や大工の技術に依存していました。しかし時代が進むにつれ、今では世界で活躍する日本人建築家が登場し、国際的な評価を得るまでになりました。
例えば、安藤忠雄さんや隈研吾さんの建築は、日本の素材感や光の扱い、空間の余白の美学を世界に伝えています。これは、伝統的な日本建築の精神が現代のデザインにも生き続けている証拠なのかなと。
※もっとたくさん名前をあげたいですが割愛
日本建築とVOULOIR DESIGNの共通点

日本建築の奥ゆかしさや素材感を現代の暮らしに落とし込むことは、VOULOIR DESIGNの大切にしたい部分とも深く通じていくべきだと思っています。
・空間の余白を大切にする
・素材の質感を生かす
・光と影を計算して心地よさをつくる
これらはすべて、日本建築の思想から学べる要素です。私たちのデザインも、過去の知恵を尊重しながら、現代のライフスタイルに合わせて再解釈していきたいです。
こちらの記事を見ていただけると、より分かりやすいかと思います。
ONとOFFがほどよく共存する、上質な住まい – 横浜・片倉マンションリノベの記録
おわりに
日本建築の魅力は、単に“古い建物”にあるのではなく、素材や空間の繊細な調和、そして人の感覚に寄り添う思想にあります。
その美学は、現代のインテリアデザインにもしっかりと息づいており、VOULOIR DESIGNの中にもその精神をより大切にし、さらに現代らしい素材も組み合わせていきながらONとOFFの共存を目指していきます。
日本建築の奥ゆかしさを知ることは、私たちが暮らす空間の美しさや心地よさを再発見することにつながると思うので、さらに日本建築について追求していきたいです。
お風呂を超えてー暮らしをデザインする造作浴室
こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
先日、オーダーメイドバスルームブランド 「BAINCOUTURE(バンクチュール)」 の見学をしてきました。ここには様々な造作浴室の展示があるのですが、お風呂を単なる「箱」としてではなく、暮らしの動線やシーンの一部として計画されているのがユニークなショールームだったのでぜひこの体験をシェアしたいと思います。
まずショールームに入ると、入り口横にはキッチンカウンターを模した受付があり、その前にソファなどのリビング空間があります。その先に広がる浴室たちは“暮らし”を思わせるつくり。キッチンやリビングに自然につながる雰囲気で、体験のはじまりから浴室を生活の延長として意識させてくれます。
ここからはブランドの紹介や造作浴室の工法の違い、実際の素材感などに詳しく説明していきます。

「BAINCOUTURE(バンクチュール)」HPより 東京ショールームエントランス
「BAINCOUTURE」の意味
「BAIN(フランス語でバス)」+「COUTURE(仕立て)」を掛け合わせた造語で、“一人ひとりの暮らしに仕立てるバス空間” を意味します。
ユニットバスメーカーであるNIKKOが立ち上げたブランドで、浴室を単なる水回りではなく住まいの中心となるリビングのような存在へと進化させていきたいのではという意図を感じます。
施工例としては、トレーニングルームの隣に浴室を配置したり、洗面所やドレッシングルームと連続的につなげたりするケースが多く見られます。入浴という行為そのものではなく、入浴前後の時間を含めた“暮らし方”をデザインしているブランドだと感じました。
「BAINCOUTURE(バンクチュール)」 HPより シームレスに繋がる洗面と浴室
在来工法とユニットバスの違い
造作浴室というと、昔ながらの在来工法を思い浮かべる方も多いかもしれません。
実際私もショールームにお邪魔する前は「BAINCOUTURE(バンクチュール)」は在来工法の会社だと思っていました。
- 在来工法:自由度が高く、石・木・タイルなど好みの素材を選べる一方、防水性能や施工精度は職人の腕に大きく左右される。
- ユニットバス:防水性・保温性に優れ、工期が短く、施工誤差が少ない。ただしデザインや素材の自由度は低め。
BAINCOUTUREはその両方のメリットを取り入れたスタイル。ユニットバスの安心感をベースにしながら、在来工法のように素材やデザインを自由に選べるため、「デザイン性 × 機能性」を兼ね備えています。
浴室は長期的に見て、水漏れなどを防ぐメンテナンス性が非常に重要な空間です。
実際にバンクチュールで最初に受けた説明も、このユニットバスの工法についてでした。デザイン性だけでなく、そうした安心面を重視している点に強い好感を持ちました。

実際に見て触れて感じたこと
- 素材と肌あたり
ショールームには数々の浴室がありますが、特に印象的だったのは御影石の浴室でした。石にはさまざまな磨き方がありますが、水磨きと呼ばれる仕上げが施されており、手で触れると驚くほど滑らかで、ほんのり冷たさが心地よく、ホテルスパのような非日常感が広がります。本磨きとの違いは、実際に触れてみないとわからないものです。
一方で、檜(ひのき)の壁やベンチは、香りの豊かさと温かみが魅力的。天然素材ということで長年使うとカビなど生えるのでは、、、と思っていたのですが、意外と10年以上メンテナンスしていないケースも多いそう。また鉋で削れば新品同様に蘇り、隙間も埋め直すことができるそうです。

御影石の浴槽と檜の縁
- 光の演出
照明の工夫も印象的でした。間接照明が石や木をやさしく照らし出し、空間に立体感を与えます。昼は自然光で素材の素顔を楽しみ、夜は照明による演出で非日常を味わえる─まさに「二面性を持つ浴室」。ダウンライトも最近はグレアレスしか提案していないとのことでした。
- いろんなニッチのデザイン
ショールームには多様なニッチがありました。これがまたデザインの見どころ。
シャンプーニッチ:ボトル類をすっきり収め、掃除もしやすい。
アートニッチ:花やアロマを置けば、バス空間がギャラリーのように。
照明付きニッチ:夜にはやわらかく光り、ラグジュアリー感を演出。
素材やサイズ、照明の有無によって雰囲気がガラリと変わり、「浴室での過ごし方」がデザインされていると感じました。



メンテナンスも大事な要素
造作浴室は見た目が華やかですが、素材に合わせたケアが不可欠とのこと。
- 御影石:水染みが出やすく、滑りやすさもあるため定期的な拭き上げや防水処理が必要。
- 檜:色味が変わったりヤニが出ることもあるが、削る・埋めることで再生可能。
「ずっと新品であり続ける」のではなく、メンテナンスを重ねながら経年変化を楽しむのも、造作浴室の醍醐味。
入浴を含めた“新しい過ごし方”を創る
今回の体験で強く感じたのは、「BAINCOUTURE(バンクチュール)」のコンセプトが、浴室を単なる箱(バスルーム)としてではなく、入浴前後の時間や空間を含めた自宅での“新しい過ごし方”を創り出しているということ。御影石の重厚感、檜のやわらかさ、光とニッチの演出……どれもが「自分らしい暮らしに仕立てられた空間」として心に残りました。
人によってはかなり長い時間を過ごす浴室。自宅に取り入れる際は、設計段階で「素材の肌あたり」「光の演出」「収納やニッチの使い方」をじっくり検討することが大切です。
これから浴室を検討される方にとっても、“浴室という空間をどう使いたいか”という視点を持つことで、より自分らしい暮らしに近づけるのではないでしょうか。
インテリアデザイナー|HMで家を建てるまで③
ブルワールデザイン(VOULOIR DESIGN)あおいです。昨年8月ごろから積水ハウスにて新居を計画し、4月末に引き渡しされました。自分がクライアントになるのが初めてだったので、色々な気付きと、失敗がありとても勉強になりました。
今回は自宅のコンセプトについてお話しします。
ONとOFFの共存
我が家のコンセプトは弊社のコンセプトでもある「ONとOFFの共存」がキーワードです。くつろげるけど、どこか緊張感と高揚感も欲しい。相反する感情と、それを叶える間取りと、素材を取り込むことで自分らしくいられる空間をデザインしました。
この対となる部分が自分の中でとても大切にしている部分で、私たちはポジティブな時と、ネガティブな時、両方の感情の中で毎日暮らしています。その中で笑って、泣いて、もがきながら日々過ごしていった先に「その人らしさ」が作られていくと思っています。
その「らしさ」って唯一無二なものですし、その人だけの「味」。対となる感情の中で生み出されたものを、空間にも取り入れることで、さらにその人らしい唯一無二の空間になるのではと思っています。見た目がオシャレというだけでなく、デザインと機能性、そこに寛ぎと少しの緊張感、高揚感を持たせ、そこで暮らす人がさらに、その人らしさという人間味を重ねていって欲しいです。
今回自宅が完成して、私らしさが思いっきり出てると思いました。そしてその中で暮らす日々は、やっぱり居心地が良く、新築なのに「真新しくない、どこか懐かしい」という感情になることもわかりました。

個人的にかっちり整頓されたモデルルームのような空間で暮らすのが苦手で、「新築だとその空気感が出てしまうなー」と考えていました。「自分が何を見たり、触ったりしたらその空気感を壊すことができるのか」と日々ぼーっと考えていた時、どこの誰が使ってきたか分からない古道具に心惹かれることに気がつきました。
なぜ好きなのか。新品のものも好きですが、どこかに人のツヤみたいなものがあると、空気が和らぐような気がしています。たとえば昔ながらの喫茶店。タイルや内装の木材の色、不特定多数のお客さんが歩いた床や座った椅子、コーヒーのしみがついたメニューやテーブル。そういったものが初めてきたのにも関わらず「懐かしい」という感情が私の中にあります。この「懐かしい」を新築に取り入れたかったのです。
ただ全てをこれで揃えると私らしさとは違うなと。前述でもあったように新しいものも好きなんです。新しいものと、人のツヤがあるもの。この対となる素材が組み合わさることが、私らしくいられる空間でもあり、私らしさを表していると思います。
素材の話

何か一つでも本物を入れたい。という決め事はありました。本物っていうのは木目調ではなく、無垢だったり、塗り壁風ではなく、漆喰など。全てフェイクのもので揃えると、どこかチープ感が出てしまうのと、空気感も全く違う。このことに気がついたのは2022年にいった箱根リトリートでした。
そこはカラマツの無垢材が床材に使用されていて、ベッドから素足で床に触れた時の感触と感動は今でも覚えています。こんなにも素材が違うだけで気持ちが高揚するのかと。
そこからリアルな素材に惹かれるようになって、いつか自宅を建てるときは大切にしようと思いました。
結果的こういった素材を揃えています。
- 無垢材(くるみ)
- 漆喰
- 大理石(御影)
- 漆のアート

他は標準の壁紙やメラミン素材もトイレの壁に使用しているのですが、上記の素材があるだけで空気感はだいぶ違うと思います。
もちろん本物の素材を取り入れることは、メンテナンスが大変と思うかもしれません。
ただ私的にはこの空気感を出せるのであれば、それは全く苦にはならず、今回自宅に取り入れて大正解でした。
インテリアの話

「家具にお金をかけることができない」
そういう声をいただいたことも多々あります。実際に注文住宅をデザインしてみて、費用がこんなにもかかるのかと、正直思いましたし、これは家具に予算を回せない気持ちも分かります。
ただ、やはりどこに何を置くのか。設計段階で決めていかないと、理想の生活シーンを作ることはできないと改めて実感しました。
我が家は主人が塊根植物が大好きで、それを中心とした家づくりになっています。
室内に飾る時と、冬以外は外に出すことがあるので、それを眺めながらゆっくりと過ごしたいという願望がありました。

そうなってくると、ソファのレイアウトや、動線確保をした際の残寸法、それにあう商品選び。ない場合は造作のテレビボードの奥行きを50mm少なくしてみる…など理想の生活シーンから考えて家具を選ばないといけません。なので家具を同時進行で考えることが、ものすごく大事なことだと私は思います。
実際暮らしてみて、何ヶ月も毎週9時間の打ち合わせをした甲斐あり、理想の生活シーンを過ごすことができ主人は嬉しそうです。
改めて空間をデザインすることが、ものすごく労力がかかること、そして私たちの生活に及ぼす影響が大きいこと。色々ありますが大変な作業だなと思いました。
まだまだまだまだ未熟ではありますが、自分が自邸デザインをしたことで得たことと、いちクライアントとして経験したことを還元できたらと思います。
インテリアが家に命を吹き込む──ヘーベルハウス駒沢展示場で感じたこと
こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
先日、「一般社団法人インテリアクリエイターズ協会」のイベントで、東京・世田谷でオープンしたヘーベルハウス駒沢展示場を見学してきました。家具や小物のスタイリングを担当されたのは、インテリアスタイリスト・窪川勝哉さん。
あおいさんは協会の事務局として参加し、私はアシスタントとして勉強のために同行させていただきました。ものすごく学びの多いイベントだったので、みなさんとぜひシェアさせてください。
本記事では、駒沢住宅展示場で実際に感じた“暮らしを彩るヒント”や“インテリアスタイリングのコツ”を、写真付きでご紹介します。これから住宅づくりやインテリアのブラッシュアップを考えている方にも参考になれば嬉しいです。

外観写真:ヘーベルハウス公式HPより引用
展示場に入る前から感じたのは、この建物が放つ独特の存在感。
無駄をそぎ落とした直線的な構造と、素材の質感が際立つ「普遍的な箱」としての強さを感じました。
建築 × スタイリングのバランス
この展示場に足を踏み入れてまず感じたのは、空間としての“圧倒的な完成度の高さ”でした。建築がしっかりと作り込まれていながらも、インテリアが自由に呼吸できるような“余白”がきちんと確保されている。
前職がハウスメーカーだったこともあり、これまでいくつかの展示場を見てきましたが、これほどまでにそのバランスが取れた空間には、なかなか出会えないように思います。
その中で特に印象に残ったのが、「建築で作りすぎない」という考え方。
主役はあくまで“暮らし”であり、建築はその背景としてそっと支える存在として設計されている。
あえてミニマルに設計された「箱」の中に、家具や小物、アートが加わることで、その人らしい空気や物語が立ち上がっていく。その潔さが空間に奥行きを生み、訪れる人の中に「自分ならどんな暮らしをここで描くだろう」と問いかけてくるようでした。
また、スタイリングにおいては「直線的な建築に対して、曲線を意識した家具を取り入れることで空間に柔らかさを加える」という窪川さんの言葉が、とても印象的でした。
丸みを帯びたテーブルや、背もたれにカーブのあるチェアなど、そうした“曲線”が空間にやさしさとぬくもりを与えているのを感じました。



直線的な建築に、曲線を意識した家具で柔らかさをプラス。
ヘーベルハウスは強固な構造が特徴のハウスメーカーです。
建築の持つ構造的な「強さ」と、家具がもたらす穏やかで人間らしい「曲線」。
「硬」と「柔」とのバランスが取れていることで、空間全体が調和し、居心地の良さが自然と生まれるのだと実感できました。
色のリレーションがもたらす心地よさ
もう一つの気づきは、空間に散りばめられた「色のリレーション」

たとえば、さりげなく飾られた植栽の葉先に入っていた赤が、キッチンに置かれたグラスとリンクしていたり。
一見すると気づかないようなトーンのつながりが、空間全体にリズムと一体感をもたらしていました。こうした繊細な調和を意識できるのは、まさにプロフェッショナルならではの視点だと感じました。
家具で仕切る、変化に強い空間づくり
リビングの隅に設けられたワークスペースは、まさに最近の住宅事情を反映した提案です。

壁を立てるのではなく、家具によって緩やかに仕切ることで、空間の用途を後から変えられる“可変性”が生まれます。仕事、趣味、子どもの勉強スペースなど、家族構成やライフスタイルの変化に柔軟に対応できる点が、とても魅力的でした。
展示場には、こうした“営業トークに使える工夫”が随所に散りばめられています。展示場案内の際に営業担当の方が説明しやすいよう、視覚的に伝わる仕掛けが空間に組み込まれていて、それを一つずつ見つけていくことも、この展示場見学の面白さだと感じました。
こだわり抜かれた小物の数々
また、スタイリングで特に心を惹かれたのは、小物の選び方とその配置。それぞれがただの装飾ではなく、空間に物語を宿すための“キーアイテム”として選ばれていました。ひとつひとつに込められた意図を聞くだけでも、窪川さんの空間づくりに対する哲学が伝わってきます。
なかでも印象的だったのが、部屋の一角に飾られていた錫箔のアート。光をあまり取り込めない壁面に、あえて鈍い光を反射する素材を配置することで、自然光との繊細なコントラストが生まれていました。

光の入り方や反射の具合まで逆算して、小物やアートが選ばれているのが空間から伝わってきます。スタイリングとは、単にモノを置くことではなく、“空間にどう作用させるか”“どんな感覚を残すか”まで緻密に構築された空間演出なのだと、改めて感じました。



個人的にツボだったお相撲さんドアストッパー
スタイリングの引き出しを増やす
「空間に余白を持たせる」「色のリンクを意識する」「丸みでやわらかさを加える」
こうした要素を、自分の提案の中にも自然に落とし込めるよう、これからも現場の経験を積んでいきたいと感じました。
そして何より、他の現場を見ることで自分の中の“当たり前”がアップデートされる感覚がありました。
自分が普段使っているアイテムでも、配置や組み合わせを変えるだけでこんなにも違う印象になるのかと、新しい視点が加わったような気がします。


空間に“感情”を宿すということ
今回の見学で得た一番の気づきは、インテリアは単なる装飾ではなく、空間に“感情”を宿すための装置のような存在だということです。建築がどれほど美しく整っていても、そこに置かれるものの意味や、空間に漂う空気感、触れることで伝わる質感がなければ、人の心に届く空間にはならない。
窪川さんが演出するインテリアは、一つ一つが感情や記憶に働きかける、トリガーのような存在になっている──そんな感覚を強く持ちました。
家具、小物、アート。それぞれが空間と溶け込み、住む人の感情やライフスタイルと結びついたとき、ようやく“住まい”としての温度が生まれる
この感覚を忘れずに、今後のスタイリングや提案にも活かしていきたいと思います。
その一枚が、空間の“余白”になる。アートと空間のちょうどいい関係
こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
なんとなく良いなと思う部屋には、静かに佇むアートが置かれていることが多いものです。けれど、“なぜそれがその空間にあるのか”をちゃんと説明できる人は、案外少ないかもしれません。
今回は、私たちVOULOIR DESIGNの事例の中から、アートが空間に与える余白や奥行き、そして選び方の考え方について、少しだけ書いてみたいと思います。
絵のある空間は「余白」がうまれる
上質な空間ほど、“余白”が計算されています。アートは、その余白を活かすための仕掛けでもあり、空間に深みを与える静かな「主張」でもあります。

例えばこちらのベッドルームに飾られた一枚のアートは、照明や造作の壁と共に、空間に深みを加えてくれました。リブ壁の縦のライン、クッションの濃淡。その流れの中に自然と溶け込みながらも、アートが静かにアクセントを添えてくれる。そんな存在になっています。
私たちがアートを選ぶときに意識しているのは、家具や壁面仕上げとのリレーションです。どんなに素敵な作品でも、そこだけが浮いてしまっては意味がありません。それと同時に色味、質感、そして空気感。それらが空間に“馴染む”だけでなく、ほんの少しだけ“ズラす”勇気も、アート選びには必要です。
ダイニングやリビングで映えるのは「奥行きのある絵」
照明計画がしっかりされたダイニングでは、光との相性がアートの印象を大きく左右します。


ペンダント照明の下に濃淡のある抽象画を合わせると、空間の“重心”が下がり、落ち着きのある食卓になります。ここでのポイントは、アートが壁紙や塗装では出せない「濃度」を与えてくれることです。
リビングの場合、テレビとの関係性や家具の高さを意識して、アートを水平ライン上に並べるのも一つの手。カウンター上に立てかけるスタイルも、カジュアルでおすすめです。
どう飾るかに、正解はひとつじゃない


アートは必ずしも額装された作品だけでなく、キャンバスパネルや写真、時には布や光のオブジェも選択肢に入ってきます。
空間のテーマやマテリアルに合わせて、「整いすぎない」ズレや、「曖昧な形」をあえて取り入れることで、ラグジュアリーな空間にも軽やかさや“遊び”を加えることができます。
アートの正解は一つではありません。けれど、“空間のために選ぶ”という視点は、暮らしに寄り添うインテリアづくりにおいてとても大切だと感じています。
アートを起点に、空間をつくる

「このアートを飾りたい」——そんなふうに、お客様が先に好きな作品を見つけている場合もあります。
そんな時、私たちはアートに使われている色や素材感、与える印象からインスピレーションを広げ、空間全体を構成していきます。
たとえば、淡いブルーグレーのアートなら、壁面を白にしてアートを引き立てつつ、クッションなどのファブリックやラグで同系色をにじませる。フレームの素材に合わせて、金属や木のトーンをリンクさせる。そんな風に、アートを“主軸”にしながら空間を設計していくことも可能です。
アートがある空間には、余韻が残る
アートは空間の主役になることもあれば、ただそっと寄り添って、場の空気を整えるような存在にもなります。大切なのは、その空間に流れる空気や気配を感じながら、自然と合うものを選んでいくこと。
VOULOIR DESIGNでは、ふと目に入ったときに「あ、いいな」と心が少しだけ動くような、そんな一枚をお客様の感性に寄り添ってお選びしています。
暮らしの余白を、美しく、やさしく彩るアート。
あなたの空間にも、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
VOULOIR DESIGNの裏側:アシスタントを2年してみて
アシスタントとして2年。近くで見てきた、あおいさんの背中
こんにちは。VOULOIR DESIGN (ブルワールデザイン)アシスタントのくるみです。
ブルワールデザインでアシスタントとして働きはじめて、2年が経ちました。
もともとはハウスメーカーで10年ほど住宅営業をしていた私。 設計担当が作った図面を説明したり、お客様とお打ち合わせするのは慣れていたけれど、「空間を“デザイン”する」ことに関しては初心者でした。会社員時代の私は、正直「フリーランスのインテリアデザイナーってどんなことしてるんだろう?」というくらいの認識で。そんな私があおいさんと一緒に仕事をするようになって、ひとつの空間をつくるまでにどれほどの工夫や視点が詰まっているのか、日々驚かされています。
現場での対応力や提案の引き出しの豊かさはもちろん、普段の打ち合わせや細かな確認のやり取りにまで“あおいさんらしさ”があって。本当にありがたいことに学ぶことは毎日尽きません。 「空間を“デザイン”する」って、ただ家具を並べることじゃなくて、“暮らす人の気持ちごとデザインすること”なんだと、この2年で少しずつ実感できるようになってきた気がします。
吸収することばかりで、なかなか形にして返せていない2年だったけれど、最近では、ふとした瞬間に 「もしかしたら、少しはあおいさんの役に立てているのかな?」と思えるような場面も。 この2年で経験したこと、そばで見てきたあおいさんの仕事について、少しだけ振り返ってみたいと思います。

モデルルームの現場で感じた“空気をつくる”ということ
あるマンションのモデルルームを担当したときのこと。クライアントへの提案書作成、家具や小物のリストアップ、スケジュール管理まで、さまざまな業務を分担しながら進めていく日々でした。
モデルルームの案件は私にとって初めての経験で、とにかくやることが盛りだくさん。提案から納品までの約4ヶ月間は、文字通り駆け抜けるような毎日でした。中でも特に印象に残っているのは、小物のスタイリングです。実際にお店をまわって商品を揃え、それを現場でひとつずつ配置していく作業は、地道だけれど奥深いものでした。
あおいさんが用意したオブジェを「ここかな?」と置いては引いて見て、空間にぴたっと“空気”がはまる瞬間があるんです。その感覚って隣で見てて本当に気持ちいんですよね。
「こっちの方がバランスいいかもね」と言いながら一緒に手を動かしているうちに、少しずつ自分の感覚にも変化が出てきた気がします。あおいさんの感性にふれながら、自分の中にもその“あおいさんらしさ”のエッセンスが染み込んでいくような感覚があって、それがとても嬉しかったです。
民泊物件は、「また泊まりたい」と思える空間を
この1年は海外のクライアントからのご依頼が多い年でもありました。あおいさんが英語の勉強に力を入れているのを横で見ていたので、そんな流れも個人的には嬉しかったです。
その中でも、リピートで民泊物件を任せていただいているシンガポールからのお客様がいて。長期滞在される方が多いからこそ、単に“暮らしやすさ”だけでなく、印象に残るような“デザインの心地よさ”にもこだわるようにしています。
実際に担当させていただいた民泊物件について、ブログでもご紹介しています。 都心でも心地よく過ごせる、コンパクトで魅力的な空間づくりについて詳しく書いていますので、よろしければご覧ください。
また最近、クライアントの方から「Googleレビューで5つ星ばかりもらってます!」という嬉しいご報告をいただきました。お客様から嬉しい感想をいただくと共に、こういった目に見える形で評価を頂くのもやはりうれしい経験です。
リノベのプロジェクトで気づいた、“ちょうどいい心地よさ”
最近では、新築やリノベーションの打ち合わせにも同行させてもらっています。 家具だけでなく間取りや素材選び、照明プランなどからお手伝いするため、話し合う内容は幅広く、そのどれもが住まい手の暮らし方に直結する大切な要素です。
打ち合わせを重ねる中で印象的なのが、あおいさんが大切にしている「ONとOFFが心地よく共存する空間」というコンセプト。 日常の中にある“仕事や家事の時間”と“くつろぐ時間”のバランスをデザインでどうお手伝いするか、という視点があおいさんの中にはいつもあって、 それが空間のつくり方にも自然とにじみ出ています。 一緒に資料を整えながら、お客様にとっての“ちょうどよさ”を探していくこのプロセスも、私の好きな時間のひとつです。
これからはお客様の別荘のインテリア計画など、さらに新しいフェーズのプロジェクトも始まる予定で、今からとてもワクワクしています。 住まいとはまた少し違う“非日常”の空間を、どんなふうに心地よく整えていけるか。新しい挑戦として、楽しみながら関わっていけたらと思っています。

これからも“背中を見ながら、少しずつ肩を並べられるように”
この2年間、最初は「ついていくだけで必死だった」毎日から、 「一緒に考えて、一緒に進める」ことが少しずつでも増えてきているかなと思います。まだまだ学ぶことばかりですが、あおいさんのように、空間のことも人のことも丁寧に見つめられるデザイナーを目指して、これからも一歩ずつ成長していけたらと思います。
あおいさん、いつもありがとうございます!笑いながら時々焦りながら、バタバタと一緒に駆け抜けた2年でしたが、これからもたくさん学ばせてください。そしていつか「ちょっと頼りになるじゃん」と思ってもらえる日が来るように、がんばります!
いつか、アシスタントではなく“パートナー”のような存在として、一緒に空間づくりができたら嬉しいなという野望を抱きつつ……。
これからもよろしくお願いします。
ONとOFFがほどよく共存する、上質な住まい – 横浜・片倉マンションリノベの記録
こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
現代の暮らしでは、自宅で仕事をする機会が増え、「ONとOFFの切り替え」が大きな課題になっています。実際、とある調査では87%の人が「オン・オフの切り替えは仕事の生産性に影響する」と考え、91%が「生活の満足度にも影響する」と回答したという結果が出ています。自宅に明確なオン・オフ空間を設け、気持ちを上手に切り替えることは、仕事にも家庭にも良い効果をもたらす鍵と言えるでしょう。個人的にも、オンとオフを空間で区分することは集中力を高め、それぞれの時間をより充実させることができると思っています。
今回は、横浜市神奈川区片倉にあるマンションの全面リノベーション事例を通じて、「ONとOFFの切り替え」というよりも、「ONとOFFが共存する空間づくり」の工夫について、少しだけお話ししてみたいと思います。
静と動のバランスをもつ暮らし
横浜市神奈川区片倉に位置する築12年のマンション。都内でお仕事をされているご夫婦が、お子様の進学を機に「もっと今の暮らしに合った住まいへ」とリノベーションを決意されました。お仕事柄、家具や空間づくりへの関心も高く、上質な素材やインテリアを取り入れた住まいづくりをじっくり楽しんでおられました。
ご要望のひとつが、「在宅ワークにも使えるけれど、リラックスできる空間もほしい」というもの。つまり、ONとOFFの時間がきちんと両立できる住まい。
そこで私たちは、“どちらか”ではなく“どちらも”が自然に存在する空間——そんな共存のデザインを目指しました。

リノベーション前のご自宅
光と素材でメリハリを。リビングに宿るONの高揚感
家族が集まるリビングには、空間を引き締めるアクセントとしてTV背面にエコカラットを使用し、上下に間接照明を仕込みました。タイルの凹凸に光がやわらかく落ち、時間によって表情を変えてくれるこの組み合わせは、リビング全体に豊かな立体感と静かな動きを与えてくれます。日中は自然光をたっぷりと取り込み、夜には間接照明だけでほの暗く過ごす——そんな切り替えも、リビングでの“ONの高揚”と“OFFのくつろぎ”を両立させる鍵に。



間接照明だけの雰囲気も素敵
・壁面タイル:エコカラットプラス ECP-930/MAJ2(LIXIL)
・ペンダントライト:Pm-11(TOWARDS)
深呼吸したくなる静けさ。寝室のOFFデザイン
主寝室には、造作のベッドヘッドと木製のリブ壁を取り入れました。ホテルライクな非日常感を持ちつつ、木のぬくもりがやさしく包んでくれるOFF空間。
リブの陰影に間接光がほんのりと浮かび上がると、それだけで空気がふわっとやわらぐような感覚になります。照明を落とし、ベッドにもたれて深く息をつくだけで、心も体もすっと整っていく——そんな静けさをデザインしました。


・リブパネル:リブ天井S ダーク(片桐銘木)
・ベッドヘッドボード(ファブリック):UP5741(サンゲツ)
・ベッドヘッドボード(土台):TJ-18337K(アイカ)
・ブラケットライト:WL-45(TOWARDS)

ベッド足下側の壁にも間接照明を
“整う”って、気持ちいい。WICのPAX収納
ウォークインクローゼットには、IKEAのPAXシステムをフル活用して、大容量かつ美しく整理された収納を実現。内部には間接照明を仕込み、引き出しや棚がやさしく光に包まれるような設えに。視認性が高まり、機能面だけでなく空間としての魅力も増しています。
どこに何があるか一目でわかる、そんな空間に立つだけで「ちょっと整えようかな」と気分が切り替わる。
ONの時間に必要なスムーズな支度、OFFの時間を楽しむための衣類の整頓——そんな“整える”という行為自体が、ONにもOFFにも心地よく作用してくれるのだと感じました。

ひとり時間にフォーカス。ワークスペースの仕掛け
リビングの一角には、造作のカウンターでワークスペースをつくりました。 デスク上の吊戸棚には書類や機材、またデスク下に配線もすべてすっきりと納められるように工夫を。
この空間に座ると、自然と背筋が伸びて、「さて、やろう」という気持ちに。
ONを引き出すための“スイッチ”のような場所として、暮らしのリズムをしっかり支えてくれる存在です。
そして仕事が終わったら、椅子を引いて、振り返って、リビングへ戻るだけ。そこにはすでに、ゆるやかなOFFの空気が流れている。そんな小さな移動が、心のスイッチになっていくのです。

・デスク面材:K-6117KN(AICA)
切り替える、ではなく、共にある
「ONの時間」「OFFの時間」と分けることも、もちろん大切。けれど、どちらかを無理に“演じる”のではなく、自然と共に存在する——そんな空間こそが、日々の暮らしを無理なく支えてくれるのだと思います。
空間のどこかにONがあり、少し横を向けばOFFがある。ふとした瞬間に気持ちが切り替わるような、そんな「共存の空間」こそが、私たちが大切にしているデザインです。
暮らしが変わるとき、空間も変えたくなる
今回のリノベーションでは、暮らし方が変わる節目に合わせて、住まいも大きく生まれ変わりました。家具・素材・照明・収納……そのすべてがONとOFFの“共存”を目指して選ばれています。
ONでも、OFFでも、どちらでも「自分らしくいられる空間」——。 それは、リノベーションという手段で叶う新しい暮らしのかたちかもしれません。
あなたが今、どんな時間を大切にしたいのか。 その想いを、ぜひVOULOIR DESIGNと共有ください。あなたにとってのONとOFFの共存”を、丁寧にデザインしていきます。
照明計画 : 吉澤麻由香
インテリアデザイナー|HMで家を建てるまで②
ブルワールデザイン(VOULOIR DESIGN)あおいです。8月ごろから積水ハウスにて新居を計画し、4月末に引き渡しされました。その中で自分がお客さんとしての立場から気づいたことをつらつら書いていきます。
※この記事はnote内で1月に掲載した内容です
前回の記事はコチラ
【質問が湧いて出てくる】
私も仕事柄、お客様とのやりとりが9〜18時ですまないことがほぼです。というのも夜中や明け方、休日は特に休み関係なく連絡が来るのがデフォルト。駆け出し当初のときは大変でしたが、今では慣れているので特に何も思わなくなりましたが、自分がお客様の立場になって、なぜこんなにも連絡が来るのか謎が解けました。
お客様心理的に「今とりあえず言わないと忘れてしまう」という感じでしょうか。
旦那が営業さんや、設計士に気になることがあればメールか電話をものすごい速さでします。私自身、「一回メモにまとめてから送りなよ」と言いますが、メモにまとめる手間より早く伝えたい、解決したい気持ちなのか…
「あ、これか」とふと落ちました。お客様にとっては気になることがあればすぐクリアにしたい。何かあればすぐ分かるようにしてほしい。その気持ちも今回お客様の立場になってより理解できたのが、かなり大きな収穫でした。それを体験したからこそ、私はお客様に対してその頻度をどのくらい軽減できるか、目に見えて分かる資料、こちらからの状況説明(現場見積もり待ちです等)をより細かくした方が良いかなと勉強になりました。
【雑談の大切さ】
打合せに入るまえ、大体なにかアイスブレイク的な会話が繰り広げられますが積水の設計士さんや、営業さんはちらっと言ったことも覚えていたり、趣味を完全に理解して、「そういえば塊根植物の〜」と会話を広げてくれます。※旦那が塊根植物好き

こんなことまで覚えてくれているんだ。と仕事では関係ない雑談のほうが人と人との距離をつめられるのではと思いました。家づくりにあたっては、踏み込んだお話も必要なので、雑談力や雑談できる雰囲気に持っていくことも私たちデザインする側は特に必要だと感じました。
【既製品の縛り】
キッチンや家具、造作家具に慣れている自分としては既製品はこんなにも選択肢がないのか!と驚かされた反面、選択肢がない分時間の短縮にもなりHMとしてはメリットしかないのかなと。
パナソニックのLクラスで一番希望色に近い扉面材を選択したら取手レスにはできず。少しうるさくなってしまったのが残念です。またカップボードの側板がなにも言わなければ側板かち+角がRになって天板より高さもあります。
どうしてもこの角がRになっているのが、気になってしまい下部収納は天板勝ち+吊り戸棚はRなしで高さは扉と面合わせになりました。
本当は扉勝ちにしたかったのですが、それはNGなので造作家具で作成するしか解決法はなく、ここにお金をかけるべきではないと思ってRのみ辞めてGOすることに。

【自分の世界観】
インテリアデザインの仕事をしていて、実際空間をイメージして立った状態で想像してみることが、ものすごく大切で、自分の1日を思い出しながら、「ここに電源は必要」「高さはこの位置にほしい」「今はこれが不便だったな」など1つずつ照らし合わせて機能性をきちんと持たせること。
それに付随してデザイン面では、好みのテイストに合わせてコンセプトを落とし込んでいく
自分はアーティストじゃないので、お客様にあったデザインをしていくのが改めてベストだと思いました。それが側から見たら「?」と思われたとしても、限られた予算の中で、何がベストなのかを悶々しながら考えて形にしていくのはやっぱり楽しいです。
ただ、自分的には私のInstagramやHP、blogやnoteをみてこんな人なんだ。と世界観を理解してくれた人からの依頼はとてもとても嬉しいです。
一方自分がどうなりたいのか。という軸も、今回お客様の立場に立って輪郭が見えてきた気がします。
細かいところまでデザインして、予算もそれなりにあり、デザインで叶えたい部分は叶えていきたいと。心の底から思いました。
私は大手企業に勤めた経験もなく、ハイコストの物件もやったことがない(2,000万くらいが今までで一番大きい予算)。某雑誌に掲載されるようなインテリアデザインを今後は目指して、目の前のお客様としっかりコミュニケーションをとって、できるだけ顔を合わせてデザインしていきたい。
そう思ったのも積水の営業さんや、設計士さんがそうであったからです。すっごく真摯に向き合ってくれて、流石だなと思いました。(この時点では…)
すでに引き渡しもされて1ヶ月経とうとしているのですが、住んでみて色々問題が発生しているので、そのことについても書き留めていきたいと思います。では
都心で叶える、コンパクトでも魅力的な民泊空間づくり
こんにちは。VOULOIR DESIGN(ブルワールデザイン) アシスタントのくるみです。
民泊を運営されている方、お持ちの物件を収益化したいと考えている方にとって、「限られた空間でどう物件の魅力を引き出すか」は常につきまとう課題です。
近年、都心部では土地や賃料の高騰が続いており、広い物件を確保することが難しくなってきています。特に東京のような都市部では、ワンルームや1ベッドルームといったコンパクトな物件が今後ますます増えていくと予想されます。だからこそ、限られた面積の中でも快適性やデザイン性をどう高めるかが、物件の価値を左右する重要なポイントとなります。
今回は、VOULOIR DESIGNが実際に手がけた、東京都中央区・銀座エリアの34.5㎡民泊物件をご紹介します。
八丁堀駅から徒歩5分、新富町駅から徒歩7分という好立地を備えながらも、室内はワンベッドルームのコンパクトな構成。この事例では、空間を最大限活用するために造作家具を含めたインテリアデザインを行い、結果的に連日のように予約が入る人気物件へと成長しました。
「面積が限られているから」と諦める前に、どのような工夫で空間の質を上げられるのか。
専門家の視点からそのノウハウを解説します。
銀座エリア・34.5㎡の民泊物件という条件
今回ご依頼いただいたお客様は、海外からの旅行者を主なターゲットとしたアパートメントを企画されていました。
この物件のコンセプトは、「自宅のようにくつろげる空間を提供すること」。一時的な滞在であっても、まるで自分の家に帰ってきたかのような安心感と落ち着きを感じてもらえることを目指しています。
ホテルでの滞在とは異なり、この空間では“暮らす”ように過ごすことができます。ラウンジチェアに腰かけて本を読み、カウンターで軽く朝食をとり、ベッドで静かにくつろぐ。そんな時間が、この空間では自然に過ごせます。
新しく訪れる国での負担を少しでも軽減し、安心して滞在できる“居場所”を提供したい。そんな想いを形にしたのが、このプロジェクトです。
ただし、34.5㎡という広さは、ホテルの一室に比べると余裕があるものの、「自宅のようにくつろげる空間」としての設計には工夫が必要です。特に、居室と寝室が分かれている構成は、動線や家具の配置によってはかえって狭く感じさせてしまうこともあります。
デザインの要:用途を集約する造作家具
- ベッドヘッド:寝る場所を“居場所”へ
この物件で特に空間の印象を高める役割を果たしたのが、壁面造作のベッドヘッドです。デスクライトを仕込むことで、「寝る場所」だけではなく、夜の読書やひと息つくための“居場所”へと機能を拡張。サイドテーブルを設け、スマートフォンや小物を置ける構成にしました。

部屋の幅ぴったりにしたデザインは、床面積を変えずに利便性と印象を底上げすることができます。
- テレビボード+カウンター:1台3役の多用途設計
もうひとつの造作家具は、テレビ台・カウンター・収納の機能をまとめた一体型ユニット。
テレビを観るためだけでなく、ちょっとしたPC作業やお化粧など朝の準備もこの場所で完結します。
過ごしやすさのため奥行きを抑えつつ、天板にはノートPCや小物を置けるだけの幅をしっかり確保し、実用性を担保しています。下にはスツールを差し込めるスペースを確保することで、必要に応じてワークスペースとしても使える設計に。また、配線やコンセント類は造作家具の内部に通すことで、見た目をすっきりと保ちつつ、掃除のしやすさや安全性にも配慮しました。

無駄を省きながら必要な機能をきちんと保つことが、限られた空間における家具デザインの鍵です。
家具選びと色使いで空間の印象を整える
既製家具についても、圧迫感を抑えるためにサイズ・色味を厳選しました。
ラウンジチェアや丸テーブルには、脚が細く軽やかなデザインのものを選び、圧迫感を軽減しました。家具の木の色味は建具のトーンに合わせることで、空間全体に一体感と温かみを持たせています。さらに、白・グレージュ・ウッドを基調としつつ、アートなどで程よいコントラストを加えることで、単調にならず奥行きのある空間に仕上げました。
コンパクトな空間では、家具1点の“存在感”が空間全体の印象を左右します。主張しすぎないが、チープに見せない。そうしたバランスが問われる部分です。

写真映えする空間が、選ばれる理由
この物件は、家具の納品が完了した状態で民泊としての運用をスタートしました。開業当初から内装の質にこだわったことで、プラットフォーム上の写真でも注目を集めやすく、多くの宿泊希望者の目にとまる物件となりました。
滞在したゲストからも「心地よい」「清潔感があって落ち着く」といった好意的なレビューが寄せられ、開始直後から予約が安定。立地の良さに加え、空間そのものの質が満足度向上につながっています。
民泊づくりにおいて大切なこと
民泊のように「限られた時間・限られた面積」の中での体験が重要になる空間では、機能と印象のバランスが求められます。
造作家具によって、寝る・食べる・作業するといった基本的な行動が、ただの機能にとどまらず“心地よく過ごす”体験に変わりました。ベッドヘッドやカウンターは、空間を圧迫することなく自然な居場所を生み出し、限られた面積の中でも快適さを保っています。
また、家具の配置やサイズの工夫によって、空間に視覚的な余白も生まれ、狭さを感じさせない仕上がりになっています。
小さな空間でも、丁寧に設計されたインテリアがあることで、空間の魅力と価値は大きく高まります。
最後に
VOULOIR DESIGNでは、用途・立地・規模に応じた空間設計とインテリア提案を行っています。「限られた空間をより良く使いたい」「写真に映える空間にしたい」など、お悩みがあればぜひお気軽にご連絡ください。ご相談お待ちいたしております。



