インテリアデザイナー|HMで家を建てるまで③

ブルワールデザイン(VOULOIR DESIGN)あおいです。昨年8月ごろから積水ハウスにて新居を計画し、4月末に引き渡しされました。自分がクライアントになるのが初めてだったので、色々な気付きと、失敗がありとても勉強になりました。
今回は自宅のコンセプトについてお話しします。
ONとOFFの共存
我が家のコンセプトは弊社のコンセプトでもある「ONとOFFの共存」がキーワードです。くつろげるけど、どこか緊張感と高揚感も欲しい。相反する感情と、それを叶える間取りと、素材を取り込むことで自分らしくいられる空間をデザインしました。
この対となる部分が自分の中でとても大切にしている部分で、私たちはポジティブな時と、ネガティブな時、両方の感情の中で毎日暮らしています。その中で笑って、泣いて、もがきながら日々過ごしていった先に「その人らしさ」が作られていくと思っています。
その「らしさ」って唯一無二なものですし、その人だけの「味」。対となる感情の中で生み出されたものを、空間にも取り入れることで、さらにその人らしい唯一無二の空間になるのではと思っています。見た目がオシャレというだけでなく、デザインと機能性、そこに寛ぎと少しの緊張感、高揚感を持たせ、そこで暮らす人がさらに、その人らしさという人間味を重ねていって欲しいです。
今回自宅が完成して、私らしさが思いっきり出てると思いました。そしてその中で暮らす日々は、やっぱり居心地が良く、新築なのに「真新しくない、どこか懐かしい」という感情になることもわかりました。

個人的にかっちり整頓されたモデルルームのような空間で暮らすのが苦手で、「新築だとその空気感が出てしまうなー」と考えていました。「自分が何を見たり、触ったりしたらその空気感を壊すことができるのか」と日々ぼーっと考えていた時、どこの誰が使ってきたか分からない古道具に心惹かれることに気がつきました。
なぜ好きなのか。新品のものも好きですが、どこかに人のツヤみたいなものがあると、空気が和らぐような気がしています。たとえば昔ながらの喫茶店。タイルや内装の木材の色、不特定多数のお客さんが歩いた床や座った椅子、コーヒーのしみがついたメニューやテーブル。そういったものが初めてきたのにも関わらず「懐かしい」という感情が私の中にあります。この「懐かしい」を新築に取り入れたかったのです。
ただ全てをこれで揃えると私らしさとは違うなと。前述でもあったように新しいものも好きなんです。新しいものと、人のツヤがあるもの。この対となる素材が組み合わさることが、私らしくいられる空間でもあり、私らしさを表していると思います。
素材の話

何か一つでも本物を入れたい。という決め事はありました。本物っていうのは木目調ではなく、無垢だったり、塗り壁風ではなく、漆喰など。全てフェイクのもので揃えると、どこかチープ感が出てしまうのと、空気感も全く違う。このことに気がついたのは2022年にいった箱根リトリートでした。
そこはカラマツの無垢材が床材に使用されていて、ベッドから素足で床に触れた時の感触と感動は今でも覚えています。こんなにも素材が違うだけで気持ちが高揚するのかと。
そこからリアルな素材に惹かれるようになって、いつか自宅を建てるときは大切にしようと思いました。
結果的こういった素材を揃えています。
- 無垢材(くるみ)
- 漆喰
- 大理石(御影)
- 漆のアート

他は標準の壁紙やメラミン素材もトイレの壁に使用しているのですが、上記の素材があるだけで空気感はだいぶ違うと思います。
もちろん本物の素材を取り入れることは、メンテナンスが大変と思うかもしれません。
ただ私的にはこの空気感を出せるのであれば、それは全く苦にはならず、今回自宅に取り入れて大正解でした。
インテリアの話

「家具にお金をかけることができない」
そういう声をいただいたことも多々あります。実際に注文住宅をデザインしてみて、費用がこんなにもかかるのかと、正直思いましたし、これは家具に予算を回せない気持ちも分かります。
ただ、やはりどこに何を置くのか。設計段階で決めていかないと、理想の生活シーンを作ることはできないと改めて実感しました。
我が家は主人が塊根植物が大好きで、それを中心とした家づくりになっています。
室内に飾る時と、冬以外は外に出すことがあるので、それを眺めながらゆっくりと過ごしたいという願望がありました。

そうなってくると、ソファのレイアウトや、動線確保をした際の残寸法、それにあう商品選び。ない場合は造作のテレビボードの奥行きを50mm少なくしてみる…など理想の生活シーンから考えて家具を選ばないといけません。なので家具を同時進行で考えることが、ものすごく大事なことだと私は思います。
実際暮らしてみて、何ヶ月も毎週9時間の打ち合わせをした甲斐あり、理想の生活シーンを過ごすことができ主人は嬉しそうです。
改めて空間をデザインすることが、ものすごく労力がかかること、そして私たちの生活に及ぼす影響が大きいこと。色々ありますが大変な作業だなと思いました。
まだまだまだまだ未熟ではありますが、自分が自邸デザインをしたことで得たことと、いちクライアントとして経験したことを還元できたらと思います。